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臥頭狂一のエロ小説ブログ。※18歳未満閲覧禁止。

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恣(ほしいまま) ~共有される幼な妻~ 第五話 (22枚)


 イケルは今夜も眠れなかった。
 隣のベッドを監視する日々が続いている。
 小ぶりな白い尻から目が離せない。父がそこにいつ手を伸ばすつもりなのか、不安でたまらなかった。
 相手が絶対の権力を握る家長であろうとも、譲れないものがある。




 暗い夜だった。
 月が見えない。広がる雲は深く、高山の夜空にちりばめられた無数の星のきらめきをも遮ってしまっている。
 セルダ家の寝室は闇に染まっていた。窓の底には煙草一本ほどの隙間があったが、光の射しこむ気配はない。忍び入るものといえば、かたかたと木枠を揺らす弱々しい風だけだ。
 外はひどく冷えこんでいるらしい。歳若い兄弟たちは、重ねた毛布を頭から被っていた。朝がたには零度近くまで気温が下がるかもしれない。
 息子たちはみな身震いしながら床に就いたが、その父は寒いとさえ思っていないようだ。窓際に寄せられたベッドの上で、熱い息を吐いている。黒い裸身が闇にまぎれていた。
 腹の下に、白肌の少女を組み敷いている。動きは緩かった。細い足首をそれぞれ握り、奥深くまで貫いている。ゆっくり愉しんでいるのだろう。反り返った腰が、円を描いてくねる。かすかな吐息と喘ぎが、紅いくちびるから漏れていた。
 すでに日付は変わっている。
 兄弟のうち、下のふたりは熟睡していた。いつもより眠りにつくのが早い。父の責めが甘く、室内が静かなためだろう。自慰を重ねることもなく彼らは瞼を閉じた。寒い夜ということもある。人肌に温まった毛布は、誘う睡魔をさぞ魅力的に見せたことだろう。
 弟たちが心地よい夢を見ている横で、イケルだけは暗闇に目を見開いていた。
 すっぽりと全身を包む毛布の隙間から、油断なく隣のベッドを凝視している。殺そうとつとめる息が熱い。頬のまわりが湿るほどだった。
 横たえた身体は固く、身じろぎひとつしない。寒さのために縮こまっているわけではなかった。体温を吸った毛布はじゅうぶん暖かい。寝返りをうてない理由が別にあった。
 彼は監視しているのだ。
 父と、そしてキーラを見張りつづける。それも、ふたりが眠るまでだ。昼間の疲れを癒すための睡眠さえ犠牲にして、監視の目を光らせていた。
 今夜に限ったことではない。イケルはもう何日も満足に眠っていなかった。
『そのうち、こっちも可愛がってやる』
 数日前、父から共有妻へ放たれた宣言が耳から離れない。白い尻を探り、小さなすぼまりを弄った指の動きが、瞼の裏へ鮮明に映し出される。無口な長男は、焦燥に脳裡を灼いていた。鍛え抜かれた分厚い胸が、ざわついておさまらない。
 セルダ家にキーラを迎え入れるとき、家長は割り当て日のほかに簡単な決まりをつくった。
 叩かないこと、性交の際に無理をさせないこと。このふたつはヘルマン自身、平然と破っているといっていい。たわいもないことで未熟な尻を容赦なく打つし、イケルはつい先日も消耗した幼な妻を取りあげられていた。休ませるという口実だったが、自分が抱きたくなったからにほかならない。
 家長の存在じたいが法律であり、絶対の権力を持つ。それは認めざるをえない。身を灼くほどの屈辱を与えられることもあるが、イケルはその都度歯を喰いしばって耐えた。この家に住む以上、諦めるよりなかった。
 問題は最後のひとつだ。後ろの穴を使用しないこと。この決まりが破られることだけは我慢ならない。小ぶりな尻の谷間に自分以外の指が触れるだけで、気が狂いそうになる。
 イケルは肛門性交を知っていた。排泄のための器官なのに、目を剥くほどの快感をもたらしてくれる。女性器とはまた違った味があった。思いかえすだけで股間に血が集まる。知らず涎が溢れてくる。
 キーラの小さな穴は、どのくらい狭いのだろう。綺麗な蕾だった。くすみもなく、肌のほかの部分と色が変わらない。硬く張りつめた勃起を挿し入れたら、泣き叫ぶだろうか。処女こそ父に譲らざるをえなかったが、後ろだけは自分のものにしたい。渇望は日に日に高まるばかりだった。
 ヘルマンは後ろで交わる趣味を持たないはずだ。少なくともイケルの記憶からは考えられない。前妻のデシレーを後ろから貫くのを何度も見ているが、巨大な男根を呑んでいたのは必ず膣だった。
 三人も妻を得たほどの男だから、経験がないかどうかはわからない。好みに合わなかったのか、あるいは最初から無関心だったのか。どちらにしろ、興味の外にあったことは間違いない。半年経ったいまも奪われていないことが、それを証明している。
 嗜好が変わったのか、それとも思いつきで口にしただけなのか。暴君の胸の内は読むことができない。あの場だけの戯れであって欲しい。イケルは切に願っていた。
 イケルに肛門性交の経験があることを、ヘルマンは知らない。父の目を盗んでの、秘密の行為だったのだ。
 悟られていたら、ただでは済まなかったろう。片端(かたわ)にされていたかもしれない。烈しい怒りを買うことは間違いなかった。従わない者、自分の意に染まぬ者に容赦する父ではない。発覚したときには破滅が待っていた。だが実際には感づかれることもなかったはずだ。
 肩を並べるようになった現在も、明かす気はない。墓の下に眠るまで、誰にも語るつもりはなかった。父に知られたくないというだけでなく、男の沽券に関わることだとイケルは思っている。彼は体面を重んじる男だった。
「おううッ……」
 闇に慣れた眼に、痙攣する巨体の影が映っている。どうやら射精したらしい。吐精を受け止める少女がじっと耐えているのがわかる。垂れた眉がひくひくと揺れていた。
「ふう……」
 白い欲望を注ぎこんだ後も、ふたりは繋がったままだった。黒と白の肌がこれ以上ないほどに密着している。余韻を愉しんでいるのだろう。黒い手がすべすべの頬を撫でていた。
 今夜はこのまま眠りにつくかもしれない。そうであって欲しいとイケルは願った。連日の監視で、さすがに疲れが溜まっている。このままでは明日の作業にも影響が及ぼしそうだった。
 睡眠の不足による肉体疲労だけではない。精神が磨り減っていた。焦りと不安が臓腑(はらわた)をきりきりと痛ませる。
 キーラの尻がいつ狙われるか、気が気でなかった。父は横柄なだけでなく、気まぐれだ。前触れもなく少女の後ろを責めはじめるかもしれない。そう考えると、いくら瞼が重くなっても眠るわけにはいかなかった。
 しかし、とイケルは悩む。実際に幼な妻の尻を奪われんとしたとき、自分に何ができるのだろうか? 決まりを守れ、と対立を覚悟してでも父に物申すのか。あるいは頭を下げ、後ろの穴だけは自分に譲ってくれと懇願するのか。そんなことすら決めかね、迷っていた。
 そもそも彼はヘルマンに逆らったことがなかった。口答えひとつ、した記憶がない。刃向かうには厚すぎる壁であり、抗いは無意味に思えた。二十五歳になったいまでも変わらない。父はあまりにも強く、無敵だった。
 町の誰よりも腕っぷしが強く、しごとは人の何倍もこなす。尊大ではあるものの、それは実力の裏づけがあってのものだ。文句を口にできる者はいない。荒くれぞろいの鉱山労働者が、五十間近のヘルマンの前では借りてきた猫のようにおとなしくなる。セルダ家の内だけでなく、町ぜんたいを含めての暴君といってもよかった。
 実力に加えて、ヘルマンには英雄にも等しい功績がある。
 鉱山を運営しているのは外国の企業だが、労働者の大半はその意味を理解していない。国という概念があるのかさえ、情報の隔絶された町の住人には怪しかった。現場監督が交替で派遣されるという事実にしか関心がないのだ。
 現場監督といっても、身分は支社長に等しい。労働者を指揮監督するだけでなく、労働時間や報酬など、待遇を左右する権限を握っている。鉱夫からみれば直接の雇い主にあたるわけだが、互いの関係は良好とはいい難かった。
 まず余所者という時点で、住人は気に入らない。
 植民地時代の歴史を知る者もすでになく、町の名すら忘れて久しい。先祖を虐げた白人のことなど、誰も覚えてはいまい。異邦の者を嫌うのは、もはや習性に近かった。外から来た者に搾取される憤りと恨みが、血の記憶として深く刻まれているのかもしれない。
 あながち被害妄想ともいいきれなかった。組合が存在しないのをいいことに、企業は労働者たちを低賃金で働かせた。この町には鉱山掘りのほかに職はない。労働者たちは従うしかなかった。ストライキなどという言葉じたいを知らぬ者たちなのだ。不満を口にしながら薄給に耐える以外、とるべき道がなかった。
 だが、ヘルマンだけは別だった。誰もが恐れる褐色の巨人は、踏みつけられて黙っている男ではない。彼がちょうど二十歳になって間もないころだ。
 ヘルマンはひとり、監督の住居に押し入ると、力づくで賃上げを認めさせたのだ。語る者はいないが、脅迫があったことを疑う余地はない。幾分ましという程度ではあったが、鉱夫の給与は改善された。
 それだけではない。彼はその上で自分の給与増加を訴え、無理押しに通したのだ。平均額の倍以上をほこる給金は、腕力で勝ち取ったものといえる。もっとも、ヘルマンは人の三倍は働く。不当な要求とはいえない。
 大げさにいえば、町を救ったも同じだった。微々たる賃金の増加とはいえ、ないよりはずっといい。それまで誰も成しえなかったことなのだ。日ごろ大きな顔をしている監督をへこませた、というのも住人の溜飲を下げた。
 以来、彼には誰も頭が上がらない。町に多大な貢献をしてくれたというだけはない。いまも頼りにされているのだ。余所者から町を守ってくれるのはヘルマンしかいないと。
 町に住む誰もが一目も二目も置いている。ヘルマンとはそういう男だった。
 イケルもまた、セルダ家の長子として周囲に認められてはいる。しごとぶりは二十代半ばにして熟練の域にあったし、筋力だけならヘルマンをも凌ぐかもしれない。傲慢さから忌避されがちな父とは違い、仲間からの信頼も厚かった。好かれるという点においては、むしろ勝っている。
 子は父の背を見て育ち、やがては追い越さなくてはならない。だがイケルにはどうしても自信が持てない。踏み越えようにも、ヘルマンは大きすぎる。むろん背丈だけのことではなく、その存在がだ。何をどうしても、どんな勝負であろうとも、勝てる気がしなかった。
 ファビオがイケルに感じているように、イケルもまたヘルマンに劣等感を覚えている。幼いころは誇らしいだけだった父の姿が、いつしか陽光を遮る巨大な影に変わっていた。ヘルマンがこの世に在るかぎり、本当の意味で一人前にはなれない。そんな固定観念が、心の奥底にまで染みついてしまっている。
「は、あっ……」
 少女の驚きを含んだ声に、イケルはあわてて目を開いた。気を抜いたすきに、瞼を閉じてしまっていたようだ。本人が思っている以上に疲労が蓄積しているのだろう。目の上をごしごしと擦り、窓際のベッドの上を注視する。
 暗がりのままではあったが、それでもぼやけた映像が徐々に鮮明になっていく。
 寝台の上で、白い太ももが垂直になっていた。上体は低くした四つん這いの姿勢だ。
 まさか。息を呑みつつ、イケルはさらに目を凝らした。闇に溶けこんでいるせいで、巨体の姿を捉えることができない。どこだ。どこにいる。もしキーラの後ろなら……。分厚い筋肉の奥で、動悸が早まる。
「……ふぅ……」
 ヘルマンの位置を確認して、彼は思わず溜め息をついた。父が座っているのは幼な妻の尻とは逆側だった。両脚を大きく開き、膝を立てている。太股より奥深くに、少女の貌があった。特大の拳が三つ編みの根もとを握り、招き寄せているのだ。
 イケルからはよく見えないが、伏せた姿勢で男根を咥えさせられているのだろう。ときおりくぐもった声がこぼれていた。黒髪を掴む手に、力が入っている。
「んうっ……ちゅ、んっ……」
 喉の奥まで突きたてているわけではなさそうだった。くちびると舌が唾液をまぶす音が、毛布を被ったイケルの耳にまで届いている。時間をかけ、ねっとりと愛撫させるつもりなのだ。逞しい肉体から、しだいに緊張が抜けていくのが見てとれる。幼な妻の口淫に、酔いしれているのかもしれない。
 最近のヘルマンは、射精の間隔が長い。
 回数が少ないのは、さすがに年齢のせいだろう。二十代の息子たちの貪欲さには及ぶべくもない。がっつく必要もなかった。その気になれば家にいる間中、少女の身体を自由にできる。週に一日しか妻を与えられない息子たちとは違い、ゆとりを持って愉しめるのだ。突きこんでは吐精し、獣のように腰を振り立てる必要が、父にはない。
 幼な妻を欲しいままにできる余裕。イケルには想像もつかなかった。
 キーラを妻にできる割り当て日には、朝から浮ついてしまう。夕食を終えたら、一秒でも早く抱きしめたい。溜めこんだ劣情を、いやというほど注ぎ、浴びせ、飲ませたい。優先するのは欲望を満たすことだが、いくら放出しても足らない。気は焦り、朝が近づくにつれ苛立ってくる。ゆっくり味わっている暇などなかった。
 キーラは特別だ。そこらの女とは、その価値からして違う。器量に著しい隔たりがあった。融けゆく雪を思わせる肌の白さはキーラにしかない。十三歳という幼さも魅力のひとつだ。稚(いと)けない目鼻立ちは、やがて艶かしさを帯びた美貌へと育つことだろう。儚げな表情は獣じみた征服欲をそそる。男なら、誰しも我を忘れて夢中になるはずだ。
 三つ編みの少女が、自分だけの妻だったとしたら。思い描いてみる。いつでも好きなときにスカートを捲くりあげ、股を開くよう命じることができる。時間さえあれば、膝の上に乗せ、じっくりと愛でることもできる。喘がせ、泣かせ、淫らなおねだりをさせるのも自由だ。そして、性器の後ろの小さな窪みを虐めぬくことも。隣のベッドで大男に奉仕する少女を凝視しつつ、イケルは鼻息を荒くする。
 四六時中キーラを弄べる立場にあったとしても、自分なら次々と白濁の液体を注ぐことだろう。己の精液の味を覚えさせ、肌に染みこませたい。己の所有物だと、刻みつけずにはいられない。それが男の独占欲というもののはずだ。
「よし、よし……きちんと、やさしく、たっぷりと、ねぶるんだぞ……」
 三つ編みを握りしめていた黒い手が、いつの間にか少女の頭をそっと撫でていた。しわがれ声に、いつもの太さがない。張りが欠けていた。横で息子たちが寝ているからといって遠慮するヘルマンではない。
「お、お……そう、そこだ……そこを、もっと……」
 奉仕されているとはいえ、終始受け身なのも気になる。血の高ぶりを抑えられず、みずからキーラの口を犯しはじめてもおかしくはない。そうでなければ、押し倒して跨っていなければならない。まったく父らしくなかった。イケルは黒い巨体をまじまじと見つめた。
 寝室はいぜんとして暗闇に包まれたままだ。肌の黒いヘルマンの表情までは窺えない。伸び放題の髭をかろうじて確認できるだけだ。白い毛が多く混じる髭が、乱れた息にあわせて揺れている。
 何も見えやしない。輪郭を捉えるのがやっとだ。奉仕する少女に視線を移そうとして、イケルははじめて気づいた。
 影が、小さい。
 イケルは危うく声を漏らすところだった。自分を落ち着かそうと、胸の前を強く押さえる。唾を飲みこもうとするが、喉はからからに渇いていた。
 瞬きを繰り返しても同じだった。ヘルマンの姿が、ひどく縮んで見える。線がもう少し細かったら、老人と錯覚したかもしれない。まるで別人だった。
 眼がおかしくなったとか、そういうことではなかった。
 身体はやはり、並はずれて大きい。股の間に潜らせている少女と比べても明らかだ。
 巨体から放たれる、威圧感が失せているのだ。近くにいるだけで男たちを緊張させる、化け物じみた凄みが消えている。
 老いたのか。イケルの背に、冷たい汗が流れる。
 振り返ってみれば、思い当たるところはいくつもあった。
 キーラを犯すときがそうだ。以前の父は、後ろから乱暴に挿し貫くのを好んだ。泣き叫んでも許さず、果てた後も抜かずに続行することが珍しくなかった。
 いまのヘルマンには荒々しさが見られない。上に跨らせた体勢で尻を振らせ、身をまかせているだけということも少なくない。吐精後の余韻に浸ったまま、長い時間少女を抱きしめているときもある。攻撃的な獣性が影をひそめたのは、衰えたためではないのか。
 執着が増したのも、老いが原因なら頷ける。
 常にキーラを傍らに侍らせている。夜どおし戯れていることも多い。射精の回数は少なくなっているのに、いつまでも少女の肌を弄んでいる。いっときでも離したくないといった態度だった。息子から横取りする習癖がついたのも、執心のあらわれといえるだろう。
 若さに嫉妬を覚えている節もある。
 ヘルマンはかつて、息子たちの前で痴態を晒すのを嫌っていた。深夜のベッドの上は別として、場所と人の目をわきまえるところがあった。幼な妻に清拭させる姿すら見せようとしなかったのだ。寝室の扉を閉めきり、誰の目にも触れさせない。その姿を想像して悶々とした日々を、イケルは容易に思い起こすことができる。そう古い記憶ではなかった。
 それが今ではどうだ。わざわざ居間で行うようになった。身体の隅々まで拭わせ、高まったところで勃起を口に含ませる。挙句には全身を舐めさせ、その場で押し貫くこともある。見せつけているとしか思えなかった。己の所有物だという、無言の主張にほかならない。
 老耄(ろうもう)したとする以外に、説明がつかないことばかりだ。
 鉱山町の巨人も、五十を目前にして枯れはじめている。職場では微塵もその気配を見せないが、自身は衰えを自覚しているはずだ。
 ヘルマンが老いを認めることはない。誇りがそれを許さないだろう。しかし矜持を保つことさえ、すでに苦痛と化しているのかもしれない。現実は無情だ。としを経れば、例外なく朽ちていくものだ。逃れることは誰にもできない。
 老いが、肉体と精神を蝕んでいく。若いイケルには想像もつかぬ恐怖なのだろう。荒くれ者どもを屈服させる腕力、何者をも恐れぬ胆力と行動力。すべてが日ごと喪われていく。焦慮はヘルマンにこそあったのだ。
 キーラだけは喪いたくないのだろう。稀有な美貌を持つ少女の存在は、何もかも手にしていた男の最後の砦なのだ。手足をもがれても、キーラは手離さない。老いぼれの妄執が、狂おしいまでの独占欲を生みだしている。生まれて出でてからはじめて、イケルは父に同情を覚えた。
「お、おお……そこを、吸え……もっとだ……」
 かすれた声で喘ぐヘルマンに、少女は従順に仕えている。唾液をたっぷり用いているのだろう。ぴちゃぴちゃと、水音が響く。肉棒を吸う音とともに、黒い影が仰け反った。
 ぼんやりと眺めながら、イケルは大きく息を吐いた。
 思えば哀れな男だった。強すぎたために、普通に老いぼれることができない。いや、周囲が悟っていなかっただけで、ずっと虚勢を張って生きてきたのかもしれない。どちらにしろ、幸福な人生だとはいい難い。
 だが不幸ともいいきれまい。鉱夫の大半は四十過ぎまでに引退を余儀なくされる。事故や胸の病が主な原因だが、死者も少なくはないのだ。四十八歳まで一線で働けたというだけで十分ではないか。胸を張って父を誇れると、イケルは思う。
 セルダ家のヘルマンは大物だ。傑物であることは誰にも否定できない。
 晩節を汚して欲しくはなかった。本人もそれは望んでいないはずだ。最期まで偉大な存在でなければならない。
 幼い妻に執着して惚けたと、後ろ指をさされるようになってからでは遅い。イケルの名誉にも傷がつく。キーラを独占するのを許していたら、老いぼれた父のいいなりかと陰口を叩かれることだろう。
 なにより、老人の余生の供にキーラを呉れてやるつもりはなかった。極上の少女は、実力者にこそ相応しい。力を喪った者が手にしていていいものではないのだ。セルダ家の家長の地位も、容色麗しい幼な妻も、立派に継げる者がいる。
 今なら、すべてが間に合う。
 毛布の下で、イケルの頬がひくひくと痙攣していた。背は冷えきったままだったが、胸の奥は煮えたように熱い。
 唇の端が勝手に持ち上がる。笑いを抑えているのか、泣きそうなのか、彼自身にもわからなかった。


 恣(ほしいまま) ~共有される幼な妻~ 第六話


テーマ:18禁・官能小説 - ジャンル:アダルト

  1. 2010/12/25(土) 12:12:12|
  2. 恣(ほしいまま)~共有される幼な妻~
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臥頭狂一

Author:臥頭狂一
(がとうきょういち)
 日々、頭痛に悩まされながら官能小説を書いています。
 いろいろなジャンルに手を出していくつもりです。よろしければ読んでいってください。
 感想、お気づきの点など、コメント、メールでいただけると励みになります。よろしくお願いします。

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