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臥頭狂一のエロ小説ブログ。※18歳未満閲覧禁止。

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仁義なき朝食 (短編・44枚)


 いつもと変わらない朝食風景。家族三人が一同に会するのは朝食のひとときだけだというのに、私はこの時間が苦痛でしかたがなかった。
 妻と娘の不和。それもある。娘はあからさまに母親を嫌っていた。
 だが、いちばんの理由は娘と私の関係にあった。
 もう、終わりにしなきゃならない。でも、はなれられない。
 娘のからだは私にとって甘い蜜だった。とろけるような、禁断の果実の甘い蜜……。




「あなた、ソースとってくれる?」
「あ、ああ……」
 私は食卓の中央にあったソースの容器に手を伸ばし、佳枝(よしえ)に渡した。妻は目玉焼きにたっぷりとソースをふりかけている。夜遅くまで働き、ろくに睡眠をとっていない妻はいかにも眠そうだ。容器を持つ手が危なっかしい。皿からこぼさないだろうか。私は食事の手をとめて妻を見守った。
「お父さん、ごめん。お醤油とって」
 ことしで中学三年生になる奈緒(なお)は朝に強い。母とは対照的に、はちきれんばかりの笑顔を見せてくれている。佳枝が夕顔なら、奈緒は朝顔といったところだろうか。
 私は醤油さしの、赤く丸いフタの部分をつかんで差し出した。この醤油さしは胴が柔らかい樹脂でできていて、うかつに握ると注ぎ口から中身が飛び出してしまうおそれがあった。
 奈緒は容器を受け取ると胴を握りしめ、目玉焼きの上に勢いよく、びゅうびゅうとかけた。こっちはこっちで皿からこぼすどころか、通学前にセーラー服を汚してしまわないか心配になる。
 佳枝は娘の手の動きには関心がないのか、それとも眠くて仕方がないのか、黙々と目玉焼きを口に運んでいた。視線は食卓の上だが、瞳になにかが写っているようには見えなかった。
 奈緒のほうは、隣にいる私にときおり意味ありげな微笑みを見せている。私も笑みをかえすが、苦笑いに近かった。溜息をつきそうになり、咳払いをしてごまかす。
――このままでは、いけない。
 娘の可愛らしい顔を見ながら、私は自責の念にかられていた。
「ん……」
 すこし食べこぼしたのか、奈緒の口の横にに黒い汁が付着した。小さな舌が、ぺろりとくちびるのまわりを一周し、醤油の跡を舐めとっていく。すこし厚ぼったい、柔らかそうなくちびる。私は、昨夜のことを思い出していた。
 あの甘いくちびるを存分に味わったのだ。娘のくちびるを心ゆくまで堪能し、その奥に白い欲望をたっぷり注ぎこんだのだ。
 奈緒は私の視線に気づくと、にっこり笑って片目を閉じてみせた。小悪魔のような娘のしぐさがあまりにも可愛らしくて、どきまぎしてしまう。横目で妻を見る。まるで私と娘のようすには気づいていないようだった。


 奈緒と私は血がつながっていない。妻の連れ子だった。
 妻と出会ったのは三年前のことだ。仕事で一息つき、私はその夜ふらりとスナックに入った。そこでママをしていた佳枝に、私は一目惚れしてしまったのだ。
 それまでの私は仕事一辺倒で、女に気をとられたことがなかった。女性に興味がないわけではなかったが、結婚するとなるとどうも面倒くさかったのだ。若いころは上司から早く身を固めろとせっつかれていたが、四十を越えるとその声もあまり聞かれなくなった。
 つきあった女も何人かいたが、ほとんど体だけの関係にすぎない。半年もするとお互いに興味を失って別れるのが常だった。のめりこむほど魅力がある女に出会ったことはなかったし、そんな女がいるのだろうかという気にもなっていた。
 男としてどこか欠陥があるのかもしれないな。私は仕事で充実した日々をおくりながら、そんなことを考えていた。それでもよかった。べつに不自由は感じていない。仕事にのめりこんでおればいいのだ。
 しかし佳枝と出会って、私の人生観は一変してしまった。まさに電撃的な邂逅だった。女の魅力とはこういうものだったのか。薄いメイクに落ち着いた雰囲気。けして太ってはいないが、服の上からでもわかる豊満な肉体。長い睫毛に覆われた瞳は、こちらの下心を見透かしていながら媚びているようにも見えた。一目見ただけで、私はこの女が欲しくてたまらなくなってしまっていた。
 私は佳枝の店に通いつめた。佳枝は聞き上手だった。店は彼女目当てで来る男性客ばかりで、しかも未婚らしき若い男も多い。三十そこそこの佳枝は、女としてもっとも熟れた時期にさしかかっている。色香に惑わされた男たちが夢中になるのも無理はなかった。
 こいつらはみんな、ライバルか。私は焦っていた。仕事以外で焦燥を感じるのは久しぶりのことだった。実際、彼女のもとへ男からの誘いが次々とやってきていた。酒に酔った勢いで口説いたり、結婚を申しこむ馬鹿もいる。
 七十のおじいさんから求婚された、と佳枝は微笑みながら語ることがあったが、私としては冗談ではすまされなかった。なんとかしなければ。私の中にはあきらめるという選択肢は存在しなかった。だが、どうしていいかわからないまま、日々は過ぎていく。
 通いはじめて一年が経とうとしたころ、私は思い余って婚約指輪を購入した。天涯孤独で貯金だけは豊富にあったので、かなり高価なものだ。金額の問題ではないと思いながらも、ついつい見栄を張ってしまう。
 店が終わるのを待ち、私は彼女を朝方までやっている居酒屋へ誘った。考えてみればここで断られたら終わりだったのだ。浅はかだったと思う。必死すぎて、周りが見えていなかったのだろう。だが佳枝は誘いにのってくれた。
 私のプロポーズは滑稽きわまりなかった。ムードもへったくれもない、疲れ果てたサラリーマンや水商売の女がたむろするような場末の居酒屋が舞台だったのだ。そこで数百万もする指輪を差し出した。勢いで行動してしまったとはいえ、もうすこし考えるべきだったと今では思う。
 彼女ははじめ、困った顔をした。ああ、駄目か。私が沈みかけたころ、柔らかそうなくちびるが開いた。
「嬉しいです。でも……娘にも、聞いて、みないと……」
 化粧の薄い頬が、赤らんでいた。私は小躍りするのをおさえきれなかった。OKを貰ったのも同じだと思いこみ、思わず彼女の手を両手に握りしめていた。
 佳枝に中学生の娘がいることは知っていた。過去に結婚暦があることも。私だけでなく、彼女の店に通う男はほとんど知っていただろう。コブつきであることを知っていてなお、佳枝は男たちの目を集めていたのだ。
「娘さんも、絶対、幸せにする!」
 私はなんの根拠もなく、興奮してそういい放っていた。

 奈緒は私を一目で気に入ってくれた。中学生の女の子は気難しいものだと思っていたが、まったくの杞憂で終わっていた。二度いっしょに食事に行っただけで、「ね、いつ結婚するの? 早いほうがいいな」と急かすほど、私になついてくれた。
 プロポーズから一月も経たないうちに、私たちは籍を入れた。式は挙げなかった。「二度目だから……」という佳枝の意向をくんでのものだ。会社の上司からは「結婚は自分たちだけのことじゃない。お世話になった皆さんに知らせる意味でも、きちんと式を挙げたほうがいい」とお説教をもらったが、それでも私は佳枝の意志を尊重した。
 佳枝を抱いたのは、籍を入れて三人で住むようになってからだ。私は急がなかった。本心では彼女をはやく抱きたくてしかたがなかったが、焦りを見せたくなくなかった。大人の余裕をみせようと、見栄を張っていたところも多分にある。
 だが待ったぶんの甲斐はあった。彼女とのセックスは想像していた以上に素晴らしく、私は深い満足を味わうことができた。
 佳枝は艶っぽい外見とは裏腹に、ベッドの上では初心な少女のように受身だった。交わる姿勢を変えるだけでも頬を染めて恥じらう。そのギャップに私はたまらなく興奮してしまい、年甲斐もなく二回戦に及ぶこともあった。佳枝は私の要求を拒むことはなかった。恥じらいながらも私の剛直を口にする仕種や、乱れたとき口を押さえて声を漏らすまいとするかわいらしさに私は燃えあがった。
 だが、幸せを実感できた日々はそう長くはなかった。夫婦の仲が冷めたわけではない。お互いの時間が合わないのだ。
 結婚するにあたって、佳枝はひとつだけ私に条件を出していた。
「お店は、続けさせてほしい」
 正直にいえば家庭に入って欲しかった。新しくできた家族を守って欲しかった。それは私のためだけでなく、可愛い娘のためにも必要なことだと思えた。もう中学生ではあったが、今まで母親が夜中に働き、淋しい思いをしてきたはずだ。そのわびしさを、今こそ埋めてやって欲しかった。
 しかし、私が仕事ひと筋に生きてきたように、彼女にとっての生きがいが店なのだ。それを捨てろとはとてもいえなかった。
 私が帰宅するころ、佳枝はしごとに出かけていく。残業ともなれば顔をあわせることもできない。彼女が帰宅するのは朝方だ。すこしの睡眠をとり、朝食には顔を出す。そして私と娘は会社と学校に出かける。
 朝食のわずかなひとときだけが、一日のうちで家族が顔をそろえる、唯一の時間だった。だから佳枝は眠い目をこすりながら、朝食にだけは顔を見せる。娘は家族の会話を盛り上げようと、いくつも話題を提供したが、母親はぼんやりとしてことばを返すことが少ない。奈緒の心中を思うと胸がしめつけられるようだった。
 休日はできるだけ合わせていたが、彼女は日ごろの疲れで一日中寝てしまうことも多かった。家族で出かける予定を忘れて、眠りほうけてしまうこともあった。
 そんなときの奈緒の顔は、とても正視できたものじゃなかった。涙こそ堪えているものの、貌は蒼ざめ、肩をがっくりと落とす。気にしていない風をよそおっているものの、落胆しているのは丸わかりだった。
 中学生ともなれば、家族で出かけるより友だちと遊びに行くほうがずっと楽しいはずだ。家族でのお出かけを気恥ずかしく感じる年ごろでもある。にもかかわらず、奈緒は私たちとの外出を心待ちにしていた。娘が家族というものにひどく飢えていることは明白だった。
 自分の不満を考えているときではない。母親の役割まで果たせるとは思えなかったが、せめて父親としてできるかぎりのことはしてやりたいと思った。
 仕事仕事で休みなく働いてきた私だが、それまでとは打って変わって休暇を消化するようになった。娘とのお出かけのためだ。もともとなついてくれていたこともあったが、奈緒は実の父親でもない私との外出を目を輝かせて喜んでくれた。
 中学生の女の子が喜ぶようなところがわからず、動物園、プラネタリウム、遊園地……なんだか小学生むきなところばかり連れて行ってしまったが、それでも奈緒は満面の笑顔を見せてくれた。
 ふたりだけの夕食にも、話がはずむようになった。奈緒は、学校でのことや友だちのことなど、なんでも話してくれた。ときには自分でつくったお菓子をご馳走してくれたりもする。
 私は本当の父親になれた気がして、とても嬉しかった。妻との生活に不満がないわけではないが、こんなに可愛い娘をもつことができた。結婚して良かったと心から思えた。


 奈緒に変化があらわれたのは最近だ。母親への愚痴をこぼすようになっていた。夕食をつくらずに仕事にでかけることがあることをなじったり、休みの日にいつまでも寝ていることを責めたりする。それまでずっと耐えていたものが、口をついて出てしまったのだろう。無理はない。私はそう思い、妻にたいする軽いフォローを入れながらも聞いてあげていた。
 だが、しだいに娘の言うことは大人びてくる。
「だいたい、お母さんは家に入るべきだよ。こんなにいいお父さんがいるのに。仕事、仕事って」
「お父さんだって忙しいのに、奈緒のためだって、お仕事休んでくれる。お母さんは自分のことばっかり」
 私はうろたえるばかりだった。奈緒は自分自身の不満ではなく、私のために母親への怒りを溜めていた。妻をかばおうとは思ったが、そのために娘を叱る気にはならなかった。私を思ってくれているのだ。どうたしなめていいのかわからない。私は困惑した表情を浮かべるほかなかった。
 嬉しくなかったといえば嘘になる。奈緒はこんなにも私のことを考えてくれているのだ、と思うと、父親として誇らしかった。世のお父さんの大半は娘から嫌われていると聞いている。私は幸せな父親だった。
 娘と母親の確執は深まる一方だった。唯一親子三人が顔をあわせる朝食の間さえ、団欒と呼べるものではなくなっていた。奈緒はあからさまに佳枝を無視して私に話しかけ、たまに呼びかける母親の声にさえ知らんふりをしてみせた。いたたまれなくなって、「ほら、奈緒。お母さんが呼んでるよ」と私が口をはさむと仕方なく返事をするが、どこか気のない話し方で、しばらくするとまた無視を決めこむのだった。
 そんなことを続けられて面白く思うはずがない。妻は苛立ちを隠せず、ひとことも口を開かずに食事を終えることが多くなった。私は針のムシロに立たされている気分で、胃が痛くなった。
 さすがに妻から相談を受けるだろうと思っていたが、それもなかった。後から奈緒に聞いたが、どうも以前から店のことで口論していたらしい。「お父さんがかわいそう」と何度も娘にいわれたために、私には相談しにくかったようだ。
 それでも本来なら、父親として娘と妻の仲を修復するよう、全力で取り組まなければならなかったはずだ。それが家族というかたちのあるべき姿だったろう。そうしなかった私は、父親失格と言われても仕方あるまい。私はそのときすでに、妻よりも娘に大きく心を傾けてしまっていた。


 今からおよそ一ヶ月前、寒い冬の日のことだった。私は脱衣所でかごに脱いだ衣服を放りこみ、湯気がたっている浴室へと入った。残念ながら一番風呂、というわけではない。佳枝が店に出る前に、入浴していくからだ。
「一家の大黒柱がいちばん先に入るのが本当なのに」
 娘は嬉しいことをいってくれる。いまどきの娘は、父親の入った後の湯にはつからないと聞く。恵まれている、と私は思った。
 めっきり薄くなってきた髪を洗いながら、私は妻と娘のことで頭を悩ませていた。朝食はあいかわらず殺伐としていた。奈緒はまるで母親がそこにいないかのようにふるまう。佳枝は娘に腹を立てるのをやめたらしい。奈緒に話しかけることもせず、黙々と食事をするだけだ。お互いに相手が見えていないようだ。私の胃はきりきりと痛んだ。頭が禿げてきたのもそのせいかもしれない。
 どうにかしなければならないと思うが、根は深かった。奈緒は母が仕事をすることじたいを認められないのだから。母はなによりも仕事を大事にしていると思っている。自分たち家族よりもだ。
「そんなことはない、お母さんは奈緒のことをいちばん大事に思っているよ。げんに結婚を申しこんだときだって、奈緒の意見で決めるって言っていたんだ」
 そう説得しても無駄だった。
「お母さんは、お父さんに奈緒を押しつけたかっただけ」
 かえって怒りを強めてしまう。妻が仕事を辞めないかぎり、溝は埋まらないような気がした。
 そもそも私は心情的には奈緒の味方だった。娘の前ではいえないが、私だって妻への不満がつのっている。一日で顔を合わせるのが朝と夕のほんのわずかな時間だけ。会話もふたことあればいいほうだ。セックスだってここ何月もない。これで夫婦といえるだろうか? 支えあうどころか、口喧嘩のひとつすらできやしない有様だった。
 それになにより、娘がかわいくてしかたがなかった。母譲りの端正な外見はさておき、私を父親として認め、愛してくれているのだ。お風呂の順番もそのひとつだが、ちょっとした気づかいが嬉しくてたまらない。仕事第一で家族をかえりみない妻より、父親を気づかう娘のほうに情がうつってしまうのは当然のことといえた。
 もちろん、このままではいいはずがない。なんとか家族の絆を回復させなければならない。しかし奈緒のことを考えていると、私は顔がにやけるのを止めることができなかった。
 そんな娘も、いつかは嫁にいってしまうのだろう。まだまだ先のことだろうに、私は真剣になって考えて胸を痛めていた。世の父親の気分が、いまになってよくわかる。娘を手放すことは、父親にとって身を切られるよりつらいことなのだと。
 思考をどんどん飛躍させながらシャンプーを流す。さあ、身体を洗おうかとスポンジに手を伸ばしかけたところで、私は固まった。いきなり浴室のドアが開かれたのだ。
 そこには、生まれたままの姿をした奈緒が立っていた。私はひどく間の抜けた顔をしていたに違いない。口を開けたまま、声も出せずにいた。
「お父さん、奈緒も、いっしょに入る……」
 娘は、ひどく思いつめた顔をしていた。貌にはほんのりと赤みがさしていたが、表情にふざけたところはまったくなかった。
「だ、だめだよ、奈緒」
 ようやく声が出る。だが、私の目は娘の裸体を見つめたままだった。まだまだ小さなふくらみでしかない、かたそうなおっぱい。柔らかそうなおなか。そして、少しだけ茂みの見える股間。みずみずしく、なめらかそうな白い肌だった。
「だって……」
「来年はもう三年生だろう。お父さんと一緒にお風呂に入ってる中学生なんていないよ」
 そこまでいって、はじめて顔をそらすことができた。真っ赤に染まってしまっているだろう顔を見せるのが、恥ずかしかったせいかもしれない。頬が火照っている。胸の高鳴りを気づかれてやしないかと、私はびくびくしていた。
 だが背を向けた私に、娘はゆっくり近づいてきた。心臓の音が耳の奥に響き渡っている。どうしていいかわからない。私が次に声を発することができたのは、背中に冷たさを感じてのことだった。
「あ……」
「お父さん……すき……」
 私の背に押しつけられたのは、奈緒の乳房だった。まだ未発達でふくらみこそ小さかったが、思った以上に柔らかい。成長期特有の張りはあったが、強く押しつけられてつぶされているのを背中で感じた。
 私はどうしていいかわからず、奈緒の気持ちを読もうとしていた。父親との接し方がわからず、こんなことを? いや、そんなはずはない。奈緒は常識に欠けた娘ではなかった。では、「好き」とは……。私を男性として見ているのか。
 娘のからだが冷たいのは、きっと脱衣所で逡巡していたせいだ。今夜は冷える。からだが冷えきってしまうほど、悩んだということか。そして悩んだすえの決断がこれなのか。
 私は娘を愛している。だがあくまでも娘としてだ。いくら奈緒のことが好きでも、その気持ちを受け容れるわけにはいかなかった。血は繋がっていなくても親子なのだ。いや、そんな道徳的なことよりも、私はせっかくできた親子の関係を壊したくなかった。かわいそうだが、ここはつよく叱らねばならない。
 やめなさい! 振り返ってそういおうとする。だが後ろを向いたときには私の口は塞がれ、ことばを発することができなくなっていた。
 奈緒のくちびるは柔らかかった。押しつけるだけのぎこちない口づけ。キスのしかたも知らないのはあきらかだった。
 だが、私はたどたどしい娘の口づけに欲情を覚えてしまっていた。しばらく用いていなかった股間のものが、むくむくと首をもたげはじめている。
「ん……奈緒の、ファーストキス、だよ、おとうさん……」
 私の首に腕をからめ、幼いからだをさらに寄せてくる。私は思わず身体ごと振り返り、正面から娘を抱きしめていた。冷えきったからだを温めてやりたかった。だが同時に溜まった欲望に衝き動かされてもいた。相反する思いなのに、行動は一致していた。
「あ、ん……うれしい、お父さん、すき……だいすき……」
 浴室に、娘の声が響く。一度抱きしめてしまった私は、抑制がきかなくなっていた。奈緒の肌はなめらかで、みずみずしくしっとりしていた。吸いついてくるような甘い白肌が、私を夢中にさせていた。ほそい背に手を這わせてやさしく撫でつつも、はげしい興奮をおさえられない。息が荒くなっていた。
 しかし、それでもまだひとかけらの理性は残っている。私は娘の背を撫でつけながら、湯船のなかを指さした。これが父親らしくふるまうことのできる、最後のチャンスであろうことを悟りながら。
「か、風邪をひく。お風呂で温まりなさい」
 声は裏返っていた。だが、これでいい。あとは勃起してしまった股間をタオルで隠しながら浴室をあとにすれば、この場は取り繕える。すこし無理はあるが、とりあえずそうするしかない。その後はなんとでもなる。
 しかし、奈緒は予想外の行動に出る。私の股間へと手を伸ばし、剛直の根もとを握ったのだ。私は唖然としてしまい、止めることもできなかった。キスもしたことがなかった娘が、こんな思いきったことをしようとは。
「奈緒……もう、こどもじゃ、ないよ……」
 黒い瞳が潤んでいる。雨に濡れた子犬のように、切なげな目だった。男なら、誰もが守ってやりたいと思えるような。
 しかし私の股間に入った手は、そんな儚げなようすとは裏腹な動きを見せていた。仮性包茎の肉棒を、包皮ごと前後に擦りはじめる。握る力は強すぎず、扱き方も心得ているかのように絶妙なものだった。キスは下手だったのに、これはどういうことだ。
「な、奈緒……どこで、こんなこと……」
「友だちに、教えてもらったの……気持ち、いい? お父さん」
 奈緒は私の男根から目をはなさない。上気した貌で見おろしながら、前後にゆっくりと扱いている。
「と、友だちって……」
「女の子だよ」
 すかさず返事がかえってくる。こんなときだというのに、娘に変な虫がついていないことに、私はほっと息をついた。
「ふふ、安心した?」
 娘は股間のものを愛撫しながら、私に向かって微笑んでみせた。漆黒の目が細まる。愛くるしい少女のなかに、女の貌が見えた。男を手玉にとる、小悪魔のような表情が。
 私はかつて妻に一目惚れしたときと同じく、いやそれ以上に、自分の娘に心惹かれていた。動悸はますますはげしくなり、吐息も同様だった。この時点で理性は意味をなさなくなっていたといっていい。私はもう、奈緒の虜だった。
「すごい……また、かたく、なったよ……」
 鼻にかかったような声。まだ幼さののこる声なのに、艶めかしく響いている。娘の手のなかで、剛直は若かりし日のごとくパンパンに膨れあがっていた。
「おねがい、お父さん……奈緒を抱いて……奈緒を、お父さんの、女にして……」
 上目づかいで私を見上げながら、奈緒は私という男をもとめた。私はもう自分を偽れなかった。奈緒を抱きたい! 目の前の少女を、自分だけのものにしたかった。
 娘のからだを、浴室の床へと押し倒す。きっと私は血走った目をしていたことだろう。鼻息は荒く、高ぶりを押さえられない。しかし、奈緒の瞳におびえた色はまったく見られなかった。
「奈緒……奈緒……」
 熱にうかされたように娘の名を繰りかえす私を、娘はじっと見つめていた。貌には微笑みすら浮かんでいて、聖母のようなやさしさを漂わせている。これからはじめて経験することに、恐れは抱いていないようだった。
 私は奈緒の乳首を口に含んだ。まだ頼りなく感じるほどの大きさでしかない、薄いふくらみの先を赤子のように吸った。
「んっ……」
 成長期女子の乳房は敏感だという。下着に擦れただけで鋭い痛みを感じることもあると、雑誌などで目にしたことがあった。私の唇がつよすぎたのか、奈緒が小さく声をあげた。
 私は即座に吸いつくのをやめ、口に含んだまま舌でころがした。佳枝の乳首とは違い、ひどく小さかった。寒さのせいか、娘の乳首はすこし硬くなっている。
 奈緒は胸に顔を埋める私の頭を撫でてくれた。その手は、寝かしつけようとするかのようにそっと、やさしく触れていた。まるで母親が赤子におっぱいを与えるように。私は三十もとしの離れた娘に、甘えさせられている気分になっていた。
「ん、ふふ……おとうさん、奈緒のおっぱい、おいしい……?」
 娘の質問に答えるには気恥ずかしく、私はおっぱいにしゃぶりついたまま頷いた。顔がさらに火照るのがわかった。奈緒のことばの影響は私を照れさせただけではない。股間の怒張に火をつけていた。はちきれんばかりに膨張した肉棒は、女の身体をもとめている。はやく奈緒とひとつになりたいと、つよく訴えかけていた。
 しかしいきなり突きこんで奈緒を傷つけたくはなかった。できるだけ優しくしてやりたい。私の舌は奈緒の肌をはなれることなく、下腹部へと滑っていく。乳房からおへその横、下腹部まで、なめくじが這ったような唾液の筋ができあがっていった。
「あ、んんっ……」
 奈緒のからだがビクビクと細かく震える。くすぐったいのだろうか。だが、くちびるの間から漏れる吐息には甘い声が混じっていた。
「いやん!」
 舌が淡い若草に触れたとき、娘は膝を閉じた。奈緒の顔はもじもじしていて、私を困ったように見つめている。拒絶ではなかった。はじめて男に女の部分を見られ、触れられたのだ。羞恥心から思わず反応してしまったのだろう。
「奈緒……開いて……お父さんに、見せてくれ」
 娘は私を見上げている。漆黒の瞳は睫毛までもが潤み、私の情欲をぞくぞくと刺激した。奈緒は私の獣欲を悟っている。それでもなお、私を受け容れてくれた。
「うん……おとうさん、奈緒を、見て……」
 しずかに、しなやかな脚が開かれた。私は容赦なく、膝を立たせた。娘の女が見たかった。奈緒の恥ずかしいところを、すべて目に入れておきたかった。
「は、はずか、しい……」
 奈緒が両手で顔を隠す。娘の恥丘からお尻の小さなすぼみまでが私の眼下にあった。何もかもがかわいらしい。まだ薄い茂みの下にある割れ目はぴっちりと閉じている。男を受け容れたことがない証だった。わずかに見えている小さな突起を吸いあげたら、奈緒はどんな声をあげるのだろう。
 これから私が女にするのだ。無垢なからだに、私という男を刻みつけてやれるのだ。そう思うと、はげしい高ぶりで頭がくらくらした。
 柔らかい割れ肉に舌を伸ばす。こじあけるように、何度も上下になぞりあげた。すこし強めの匂いまでが、甘く感じられる。ゆっくりと、私の舌が娘の割れ目を押しひろげていった。
「は、あ……あ、ふっ……ん……」
 たっぷりと唾液をまぶした舌で突端をなぶると、奈緒はあきらかに悩ましい声を漏らしはじめた。唾液にまみれたピンク色が、はしたないほどに尖っている。口に含んで吸ってやると、お尻をいやらしくねらせた。割れ目の間の小さな裂け目からは、とろとろと淫らな液体があふれ出している。覆った手の間から見え隠れする貌は、恥じらいに紅く染まっていた。かわいらしかったが、男の劣情をくすぶる女の貌をのぞかせてもいた。
 もう我慢ができなかった。女の悦びを舌で味あわせてやりたくもあったが、それは後回しだ。股間ははげしく疼き、痛いくらいに勃起している。目の前の女が欲しい。それしか考えられなくなっていた。
 亀頭の先端で割れ目をぐりぐりと押しあける。淫らな穴の入り口へとあてがっただけで、娘の白い裸身がびくんと跳ねた。
「奈緒……」
 娘を見おろす。顔を覆っていた手は解かれ、私をまっすぐに見つめていた。澄んだ瞳には迷いがなかった。
「おとうさん……きて……奈緒を、おとうさんの、ものにして……」
 奈緒のことばは私の背すじから腰までを、ぞくぞくと刺激した。限界まで膨らんだと思っていた肉棒が、さらに一回り太くなったような気がする。すでに娘を犯すという禁忌は私に歯止めをかけるものではなく、欲望を増幅させる劇薬と化していた。
 尻に力を入れる。わずかずつ、男根の先端が膣口に埋まっていく。娘のからだに力が入るのがわかった。つよい抵抗を感じながらも、私は腰をさらに押し出した。
「んんっ……いっ……!」
 痛い、ということばを、奈緒はとっさにのみこんだ。苦悶の表情を浮かべている娘を見おろしつつも、しかし私はやめようなどとはまったく思わなかった。むしろ逆だった。苦痛に耐える娘の貌に劣情を増幅させていた。眉間を寄せて涙を浮かべる奈緒の貌はうつくしかった。もっと泣かせたいと思った。鬼畜めいた獣欲が、私を支配していた。
「ぎぃっ……ひ、うっ……!」
 奈緒は歯をくいしばって痛みを堪えている。私はいま、娘の処女膜をえぐりとっている。奈緒の処女を破った男は、ほかの誰でもない、私なのだ。そう思うと背中に走る寒気のようなものが止まらなかった。もっと痛がりなさい。もっと泣きなさい。私は非情にも心の中でそう叫んでいた。
 一方で拷問のような痛みを感じているであろう娘を思い、胸を痛めてもいた。子供のように泣くのを我慢して、くちびるを震わせている奈緒は痛々しく、かわいそうだった。
 矛盾したふたつの想いはしかし、娘を心から愛しているということでは一致していた。男根を根もとまで貫いたときには、奈緒とひとつになれた喜びに昇華され、慈しむ気持ちだけが残されていた。
「奥まで、入ったよ、奈緒……」
 大きく息をつきながら、私は娘の腹の上で微笑んでみせた。それは喜びをあらわしただけでなく、奈緒を安堵させるためでもあった。
「うっ……うう……」
 けれども娘は、手の甲を目の上に置いたまま泣きじゃくっていた。柔らかそうな頬に涙が流れる。しまった、勢いにまかせてやりすぎた。奈緒はまだ中学生なのだ。いくらなんでも優しさが足りなかった。愛しい娘を欲望のおもむくままに犯すなんて、どうかしていた。私は後悔したが、後の祭りだった。奈緒は嗚咽をこらえてくちびるをひくひくと震わせていた。
「ご、ごめん、奈緒。痛かったな。い、いま、抜くから」
 私はしどろもどろなに、いい訳じみたことばを吐いた。娘の横たわるすぐ床のすぐそばに手をつき、反動で身を引こうとする。その腕を、小さな手につかまれた。
「だ、だめ……さいごまで、して……」
 涙声だった。大きなまなこは赤くなりかけている。だが私の腕を握った手の力は強かった。
「し、しかし……」
「泣いちゃって、ごめんなさい、おとうさん……。奈緒、痛いけど、うれしいよ……」
 娘のことばは、私の胸をどきどきと高鳴らせた。ひとつになったことを、奈緒も喜んでくれている。しかしそれでも娘の姿は痛々しく、私はそれ以上の苦痛を与えるのをためらっていた。
「おねがい、おとうさん……奈緒に、痛くして、いいから……」
 私は背すじに戦慄を覚えていた。私が処女膜を破っているときにはげしく高ぶっていたのを、奈緒は悟っていたのだ。勘違いではない。「痛くしていい」と口にしたときの娘の瞳は、露骨な媚びを含んでいた。
「いいよ……おとうさんのおちんちんで……奈緒を、いじめても……」
「な、奈緒……」
「お母さんのぶんも……奈緒を、いっぱい……いじめて……ひゃんっ……!」
 私は完全に暴走していた。娘を慈しむ気持ちも、苦痛を与えてしまった後悔もふきとんでしまっていた。奈緒は、私のすべてを受け止めてくれようとしていた。娘にたいする劣情も、愛情も。妻にたいする不満も。そして溜まった欲求でさえも。
 ならば私は苦痛でもって破瓜を刻みつける。泣き叫ばせて、父親の肉棒をたっぷりと味あわせるつもりだった。
「ひあっ……! ひんっ、い、いたぁい! おとうさん、痛い、ようっ……!」
 娘の悲鳴が心地よかった。膣内はせまく、みちみちと男根を締めつけている。肉茎の根もとに鮮血がこびりついているのが見えたが、私はかまわず突きこんでいった。
「いたい、いたいぃ……いたいけど、もっと……もっと奈緒をいじめてぇ……!」
 激痛に貌を歪める奈緒はひどく艶かしかった。その台詞は無理をしているだけでなく、奈緒の本性をあらわしているのかもしれない。吐息のなかには甘いものが含まれていた。苦痛のなかに快楽を得ているのだとしたら、天性の淫ら人形といえた。
 私の高ぶりは極限に達していた。腰の周りが加熱し、猛烈な勢いで奔流が昇ってくる。はげしい放出欲が、私の全身を支配していた。
 それでも胎内に射精するのを押しとどめることはできたはずだった。それだけの分別は残っていたと想う。しかし私は外に放出するという選択をしなかった。娘の膣内に放出したかった。熱い獣液を、たっぷりと注ぎこんで自分の色に染めてやりたかった。
「奈緒! 奈緒っ……!」
 小刻みになった私の動きから限界を感じとったのか、奈緒は腰に脚をからめた。逃がさないとでもいうように。のぞむところだった。私は吐精に向かって腰を打ちつけ、娘を苦痛に喘がせる。そしてその衝動がやってきた。
「うううッ……!」
 すかさず、尻に力をこめて前へと押し出す。下腹部どうしがぴったりと密着される。娘のもっとも膣奥で放出するつもりだった。
 ドクンッ……! 脈動がはじまる。全身が痙攣をおこしたように震えた。止まらなかった。奈緒の胎内で肉棒が脈打つたび、私の全身は釣りあげた魚のように跳ねまわった。口からおかしな喘ぎが漏れつづけ、呼吸もままならない。こんなはげしい射精ははじめてだった。
 ドクンッ! ドクンッ……! 射精を終えたら心臓の鼓動も止まってしまうのではないかと思えた。私の肉体が跳ねるのにあわせて、奈緒の白いからだもビクンッと反応した。いま、娘の胎内に注ぎこんでいるのだ。私の、精液を!
 何度脈動したかわからない。長い長い射精だった。きっと大量に放出したことだろう。私はそのまま娘のからだの上に倒れこんだ。ふたりの荒い息が、欲室内に響いている。
「これで……おとうさんは、奈緒のもの、だよ……」
 耳元で囁かれる娘の声を、私はどこか遠くで聞いていた。


 翌日、私と奈緒はそろって風邪をひいてしまった。だからといってべつに妻に感づかれたりはしなかったはずだ。「昨日は寒かったから」で話は流された。
 表面上は今までと変わらない日々がつづいた。だが、妻の知らないところで私と奈緒の関係はつづいていた。私は奈緒におぼれ、夢中だった。
 佳枝と違い、ベッドの上の奈緒は積極的だった。恥じらいがないわけではないが、つねに私の考える先をいった。教える前から私の剛直を口に含み、吸いたてた。才能なのか、すぐに妻よりも上手になった。たまらず果てると、かならず音をたてて呑みほした。吐き出したことは一度もない。
 セックスも同様だ。上気した貌で、こちらが赤面してしまうような痴態をとる。ときにはお尻を突きだし、犬のようにふって私を誘うこともあった。何度目かの交合で、奈緒は淫らな声をたてるようになった。奈緒は声をおさえようとはせず、むしろ悩ましい声で私に淫らなおねだりをした。私が興奮する急所を心得ていて、いつも私は若造のように我を忘れてがっついてしまうのだった。
 母子ではあったが、似ているのは顔かたちだけかもしれなかった。ふたりはあまりにも対照的だった。奈緒は性に貪欲であり、つねに自分から私を悦ばせようとつとめた。妻にはない魅力が、私を虜にしていた。
 奈緒は私の男根を弄ぶのがお気に入りだった。仮性包茎の肉棒を玩具のようにいじくりまわす。余り気味の包皮を剥いてはもどす、そうやって扱かれているだけで射精してしまうこともあった。奈緒に扱かれると、亀頭が充血して赤くなった。
「えへへ、おとうさんの、おちんちん、赤くしちゃった」
 そういいつつ亀頭にキスし、残り汁を吸い出す娘の貌は、寒気がするほど愛らしく、また艶やかだった。
 私と関係を持つようになってから、母親との関係も少しずつではあるが改善が見られた。相変わらず会話はまったくないが、少なくとも存在を無視するような態度には出なくなった。まれにではあるが、佳枝のために皿を並べたりするようにもなっていた。
 安心したのだろう。妻は以前より私との会話を大事にするようになっていた。店を臨時休業にして、私との夜を過ごすこともあった。
 久しぶりの佳枝とのセックスは新鮮だった。奈緒ほどの興奮はないものの、安堵感があった。やはり罪悪感がどこかで心に引っかかっていたのだろう。妻を抱きながら、やはりこのままではいけない、と思った。
 奈緒に未練がないといえばまったくの嘘になる。正直にいって、奈緒の肌には狂おしいほどの執着がある。だが、私は男としてより、父親として奈緒といっしょにいたかった。勝手な話だが、区切りをつけるべきだと思った。
 そして昨夜、私は奈緒に打ち明けた。もう終わりにしよう。お父さんがすべて悪かった。奈緒の将来のためにも、すべて忘れて親子に戻ろう。
 娘の貌から、完全に血の気が引いていた。私のことばが信じられないという表情だった。
「お父さんは、奈緒のもの、なのに……」
「わかってくれ、奈緒。やっぱり、このままではいけないんだ」
 しかし奈緒は私の話を聞こうともしなかった。引きちぎるように着ている衣服を脱ぎ捨て、素裸になった。
「やめるんだ、奈緒」
「奈緒、お母さんなんかに負けない。奈緒のほうが、ぜったい、いいもん。奈緒、おとうさんのためなら、なんだって、できるよ」
 腰にまとわりつき、股間に頬ずりする娘に、私は抗えなかった。私を見上げる瞳は、吸いこまれそうなほど澄んでいるのに、底が見えない。私は奈緒の瞳に引きずられ、堕ちていった。
 皮ごと扱かれながら肉棒を吸われ、口のなかに射精。魂まで吸われそうだった。果てたあとの肉茎に、奈緒は頬をすりすりと擦りつける。
「すき……おとうさんの、おちんちん、すき……」
 たちまち勃起した男根を、さらに扱く。今度は私の背後に周り、尻の穴を舐めながらだ。喉の奥から勝手に声が漏れる。娘は嬉しそうに笑いながら、私を責めたてた。手のなかに吐き出した精液を、奈緒は私を見つめながら、美味しそうにすする。肉棒に付着した最後の一滴まで舐めとり、奈緒は微笑みながら私を見つめた。
「うふふ、おとうさんのおちんちん、まっ赤……」


 昨夜のことを思い出すと、頭が痛くなる。いったいこれからどうすればいいのか、見当もつかなかった。
 娘との関係を断ち切らなければならない。それはわかっている。だが奈緒は私にとって甘すぎた。禁断の甘い蜜を知ってしまったら、もう元には戻れないのだろうか。
「どうしたの? お父さん」
 奈緒が食事の手を止めた私を見ている。箸を握りしめたままだった。私の皿の目玉焼きには、まだ手がつけられていない。
「奈緒がお醤油、かけてあげるね」
 自分の目玉焼きにしたように、びゅうびゅうと醤油を噴射させる。シャツに飛び散りそうだったが、止める気にはならなかった。
 醤油の池に沈んだ目玉焼きを見ながら、私はため息をついた。食欲がない。私はまだ湯気を昇らせているコーヒーカップに手を伸ばした。
「あ、この醤油さし、何かに似てると思ったら――」
 奈緒は醤油さしの赤く丸いフタを指先で撫でながら、誰に言うでもなく口を開く。
「お父さんのおちんちんにそっくりだね」
 私は口の中のコーヒーを、勢いよく噴き出していた。琥珀色の液体は向かいに座っている妻の顔へとふりかかる。
 私はあわてて妻の顔色を窺った。佳枝はコーヒーをぶっかけた私のほうなど目もくれていない。眠たげだった目は見開かれ、私の隣を睨みつけている。まるで般若のような表情を浮かべて。
 娘と妻は、仇敵のように対峙していた。ふたりの瞳からは互いへの憎しみしか読み取ることができなかった。
 長い一日になりそうだった。


テーマ:18禁・官能小説 - ジャンル:アダルト

  1. 2010/02/08(月) 17:17:17|
  2. 短編
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Author:臥頭狂一
(がとうきょういち)
 日々、頭痛に悩まされながら官能小説を書いています。
 いろいろなジャンルに手を出していくつもりです。よろしければ読んでいってください。
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